相続手続と印鑑証明書


遺産分割協議が成立した後、その協議内容に基づいて不動産の名義を変更するとか、預貯金の解約・払戻しを行う等の場合には、相続人全員の印鑑証明書が必要になります。

その関係で、遺産分割協議書自体にも実印を押印するのが普通です。


印鑑証明書を下さい、と言われたら・・・


このように、遺産分割には実印や印鑑証明書がつきものですが、その取扱いには神経を使わなければなりません。

私の経験した事例では、被相続人と同居していた他の相続人から「市役所の手続に使うから」と言われて印鑑証明書を送ったところ、 遺産分割協議もしていないのに、いつの間にか実家の不動産が全てその同居相続人名義に登記されてしまっていたというケースがありました。
結局、真相は分からずじまいでしたが、印鑑証明書の印影を利用して印鑑を別にもう1本作成し、遺産分割協議書を偽造した疑いが強いように思われるケースでした。

こうしたケースもありますので、よほど信頼できる間柄でない限り、他の相続人に印鑑証明書や実印を預けることは、少なくとも遺産分割協議の成立までは避けた方がよいように思います。



あるいは、必要があるのであれば、交付を求めている相手に、何に使うのかを確認し、本当に印鑑証明書が必要になるのか自分で直接確認してみる等の注意が必要でしょう。

また、交付する印鑑証明書自体に用途を書き込んでから渡すという方法もあります。
境界確認のために渡すのであれば「境界確定用」とか、「預貯金の払戻用」といった具合に書き込んでから渡す訳ですね。
こうすることによって、少なくとも、渡した印鑑証明書が何か得体の知れない用途に利用されてしまうことを事実上防止できるように思います。