売却代金がそのまま分配される訳ではない!


不動産を売却して代金を分けるという場合、まず注意が必要なのは、当然のことながら、代金全額が分配の対象になるわけではないということです。

不動産を売却するためには、不動産業者に支払う仲介手数料、測量や共同相続登記の費用がかかります。
また、譲渡価額から取得費や譲渡費用を控除した譲渡益が発生する場合には、譲渡所得税の申告と納税も必要になります。

土地の評価額にもよりますが、こうした諸経費だけで数百万円に上ることも珍しくはありません。

こうした諸経費を考慮しないで、売買代金の額だけで考えていると、手取り分が予想していたのと全く違ったなどということにもなりかねませんので、注意が必要です。

遺産分割協議を最終的に成立させる前に、予めシミュレーションを行って、諸経費を差し引くとどれくらい分配を受けられるのかを、よく検討してみる必要があるでしょう。


相続人が遺産不動産に居住している場合


あと、売却して代金を分ける場合に注意が必要になるのは、特定の共同相続人がそこに居住しているケースです。
親名義の自宅で親と同居していた子などとがその典型ですね。

こうしたケースで、その不動産を売却して代金を分割するとなると、そこに居住している相続人が新たに転居先を見つける必要が出てきます。
そのため、居住相続人が売却に慎重になったり、転居先の確保が難航するなどして、共同相続人間の足並みが揃わず、遺産の売却がなかなか実現しないことがあります。

こうした場合の処理はなかなか難しいものがありますが、遺産分割協議書の中で、売却実現までの目標期限を唱っておき、 それを過ぎても売却が実現できない場合には競売に付す等の条項を入れるようにする等の工夫があってもよいかも知れません。
もちろん、居住相続人の合意は必要になりますが。