事例1 自宅不動産を売却して代金を分割した事例


事案の概要

主な遺産は、被相続人(80代男性)の自宅不動産(土地・建物)のみ。相続人は子(兄弟)2名で、次男が遺産不動産に被相続人と同居し、生活の面倒を見ていた。
当方の依頼者は長男で、遺産不動産を売却して代金を分割することを希望したが、次男はこれを拒否し、寄与分を主張するなどして争う姿勢を見せていた。


経過

長男の代理人として、次男と手紙や電話のやりとりをして交渉。
次男が遺産不動産の単独取得を希望したため、代償分割(代償分割の意味についてはこちら)の方向で協議を進めたが、 代償金の額について双方の意向の隔たりが大きく、交渉が難航。
早期解決を希望する依頼者の意向もあり、売却代金の分配を法定相続分よりも若干次男側に多くする提案をしたところ、売却の方向で合意が成立した。
遺産分割協議書を取り交わした上、遺産不動産を売却に出し、3ヶ月後に約3000万円で売買契約が成立。
売買代金から諸経費を控除した額を分配して終結した。依頼者である長男の最終的な取得額は1000万円台前半。交渉開始から終結までの期間は、約1年。


担当弁護士の雑感

遺産不動産に居住している相続人がいる場合、代償分割の方法が取れればベストですが、まとまった資金が必要になります。
資金対策をしていなければ、売却して代金を分けるしかないのですが、相続人の意見対立がある中で、双方が歩調を合わせて売却することは簡単ではありません。
本件の場合も、次男の方への分配額を増やすことでようやく合意に至りました。長男の方が決断して下さったおかげであるのは、いうまでもありません。


事例2 音信不通の兄弟姉妹から調停を申し立てられた事例


事案の概要

遠方の家庭裁判所から、遺産分割調停の呼出状が届いたと相談。依頼者(被相続人の長女)は、とある事情から郷里を離れ、被相続人(母)や兄弟姉妹と連絡を取らずに生活してきた。
今回、調停申立書が届いて初めて、母の死を知った。
被相続人の遺産としては、わずかな預貯金と、一人で居住していた土地建物、若干の農地のみ。


経過

依頼者の代理人として調停に出頭。遠方のため、依頼者本人は出頭しなかった。他の相続人(2名)は代理人弁護士を選任せず、本人が出頭。
預貯金は残高が極めて少額で、農地は相続人が事実上決まっていたため、遺産の分割方法の焦点は、被相続人の自宅不動産をどのように分割するかのただ1点。
各相続人にはそれぞれ自宅があったため、売却して代金を分割することで概ね一致し、地元の不動産業者に売却の仲介を依頼。
都市部ではなかったため、果たして買い手がつくかどうか未知数であったが、幸運にも1ヶ月程度で売却できた。
当方の依頼人を含め、各相続人に数百万円の金銭を分配し、調停を成立させた。
調停申立から解決までの期間:半年程度。


担当弁護士の雑感

本件の場合、依頼者と他の相続人との間に激しい感情的対立があり、調停の席では、他の相続人の矛先が代理人である私に向かってきました。かなり感情的な言葉を投げつけられた記憶があります。
その点は仕事なのでよいのですが、依頼者の方には、出頭するごとに日当をお願いしていた(裁判所が遠方のため)関係で、できるだけ早期に、弁護士報酬を払ってもペイするような 条件で調停を成立させることに気を遣いました。
幸い、不動産の売却をお願いした不動産業者さんの腕が良く、何とか、ある程度の価格で売却でき、依頼者の方にもそれなりの額をお渡しできた格好です。
不動産業者さんあっての事例でした。


事例3 寄与分の主張を争い、申立てを取り下げさせた事例


事案の概要

被相続人は80代男性、相続人は3名の子。
遺産分割協議のなかで、被相続人の近所に居住していた長女が、被相続人を看護したこと、被相続人所有の賃貸マンションの管理を代行してきたこと等を理由に、 寄与分を主張。
これを認めない長男、次女との間で折り合いがつかず、結局、長女が遺産分割調停を申し立てた。


経過

調停を申し立てられた段階で長男から依頼を受け、代理人として調停に出頭。長女が主張する寄与分については、兄弟姉妹の間における療養看護の実態や、賃貸マンションの管理について、 親族としての通常期待される程度を超える寄与はないことを主張して争った。最終的には、長女側が寄与分の申立てを取り下げ、法定相続分どおりの分割で調停が成立した。


担当弁護士の雑感

寄与分の主張は、家庭裁判所ではなかなか認められないのが実情です。
そればかりでなく、無理な寄与分の主張は、相手方の感情を刺激し、迅速な解決を遠ざけるリスクがあるように思います。
本件では、長女側に代理人弁護士がついていたのですが、そのあたりのことを弁護士がご本人に説明していたのかどうか、若干疑問が残りました。


事例4 遺産分割協議の効力を争って和解に持ち込んだ事例


事案の概要

依頼者は被相続人の長女と次女。遺産分割協議もしていないのに、実家の土地建物が全て長男名義に相続登記がされていることが判明したとのこと。
聞けば、不動産登記とは全く別の用件で長男に印鑑証明書を交付したことがあり、その印鑑証明書を利用して遺産分割協議書が偽造された疑いが強まった。
法務局での調査を経て、遺産不動産について、共有持分権の確認、持分更正登記手続請求を求めて訴訟を提起した。


経過

訴訟では、遺産分割協議書の押印が真正なものか否かが争われたが、当方の依頼者2名とも、不正な手段で登記がなされたことに憤っており、実家を継いでいる長男が遺産不動産を 取得すること自体に異議があるわけではなかったため、適正な額の代償金を払ってもらうことで和解が成立した。
代償金の額は1人あたり数百万円台後半。訴訟提起から和解成立まで約8ヶ月。相談から最終解決まで約1年半。


担当弁護士の雑感

和解で終結したため、真相は未だ不明ですが、印鑑証明書が悪用された疑いが強い事例でした。
印鑑証明書の恐ろしさについては、こちら「安易に印鑑証明書を渡さない」も参照して下さい。
悲しい話ではありますが、親族間であっても、印鑑証明書を安易に交付することは避けた方がよさそうです。


事例5 無効の自筆証書遺言を使って死因贈与契約を認めさせた事例


事案の概要

依頼者は、被相続人の長男(被相続人よりも先に死亡)の妻。依頼者と被相続人は、嫁と姑の関係。
被相続人の生前の生活の面倒を依頼者がみていたため、被相続人が遺産の一部を依頼者に贈与する旨の自筆遺言を作成して依頼者に渡していたが、日付の記載がなく、遺言書としては無効であった。
このため、依頼者と相続人の一人(被相続人の長女の子)との間で紛争となった。


経過

依頼者の代理人として、依頼者の財産取得に異を唱えていた相続人と折衝。
確かに被相続人の遺言書は無効であるが、被相続人がその遺言書の内容を依頼者に伝え、遺言書も交付していた事実を踏まえ、死因贈与契約が成立した旨主張し、折衝した。
最終的に相手方がこの主張を受け入れ、遺言書で指定された財産を依頼者が取得することで合意が成立した。


担当弁護士の雑感

遺言書が無効であっても、それが作成され、保管されていた経緯等によっては、死因贈与契約の成立が認められる余地があります。
本件は話し合いで解決したので、訴訟になった場合にどのように判断されたかは何とも言えませんが、無効の遺言書であっても、それが意味を持つ場合もあります。


事例6 相続した債務を分割払いにしてもらい、自宅を確保した事例


事案の概要

依頼者は、被相続人(会社経営者)の妻。遺産として自宅の土地建物があるが、金融機関に対する負債もあり、遺産不動産はその担保となっていた。 相続人は、依頼者のほか、未成年を含む子が3名。遺産不動産には依頼者、子3名と被相続人の父が同居。
被相続人の死亡によって事業継続は不可能となり、金融機関から、残債務の一括弁済、遺産不動産についての担保権実行を迫られることとなった。


経過

相続放棄、限定承認も考えられたが、自宅を手放さなければならず、子ども達や同居の高齢者(被相続人の父)のことを考えると、選択肢として現実的ではなかった。
そこで、依頼者(配偶者)以外の相続人は全員相続を放棄し、依頼者のみが相続人として自宅を相続し、金融機関に少額の分割払いを認めてくれるよう交渉することとした。
幸い、金融機関が直ちに競売に踏み切ることは考えにくい事情があったため、当方の要望通りの条件で合意が成立し、自宅を確保することができた。


担当弁護士の雑感

詳細は書けませんが、本件では、某金融機関の担保の取り方が甘かったことに救われた部分があります。
競売に踏み切っても売却は難しいと思われる事案でした。そうでなければ、恐らく、当方の分割払いの申出は一蹴されていたものと思われます。